gozo rop

頭の中

台風でおかしくなった話

むかしむかし
おじいさんとおばあさんがテニスをしていました


観客A
「このラリー、いつまで続くんだ」
観客B
「かれこれ二時間は打ち続けてるぞ、、」

ラリーの勢いに気付けばオーディエンスが
生まれていました


おじいさんはラケットのグリップを
握り直す度に

おばあさんとの出会いを呼び起こしていました

夜の公園のベンチでおそるおそる重ねた手


付き合いたての頃行ったお化け屋敷で
「大丈夫だよ!任せてクレオパトラ!」と

「俺がいるから安心してクレオパトラ♪」と
目をつぶりながら強く握った手


雨の日に一つの傘を二人で持った時に
フランス料理に添えるような勢いで添えた手

手を握ったいくつもの記憶を
思い出すように

記憶のグリップを握っていました

おばあさんの打った豪速球が飛んでくる

こいつは、、! ドライブスピン!

おばあさんとドライブに行った記憶が
呼び起こされる

おばあさん「ETCってなんぞや」

いかんいかん

思い出のグリップを握ってる場合じゃない

いまは!

この試合に集中しなくては

おじいさんは
強く地面を踏みしめた

地に足つけて
ヤッホーと心の中で叫んだ

おばあさんの体内
細胞ら「おい!早く血液循環させねえとまた上から文句つけられんだろ早く歩けよ」

血「許しちゃもらえませんかねぇ!許しちゃもらえませんかねぇえ!」

菌「おい、なにかきこえねえか」

細胞ら.菌.血「ん?…」

そっと耳を澄まして上の方を見上げた

観客C
「どうなるんだこの試合はよぉぉ!」
「互いに一歩も引けをとらねぇなぁ!」

おばあさん&おじいさん
「あい!!」

観客D
「31....29431...29432...29433(ボソボソ)」

観客C「おまっさっきから横でブツブツブツブツよう!うるせぇ!なぁ!?」

観客A「かぞえてるんだ...」

観客C「!!?」

観客A
「こいつはラリーが始まった瞬間から
すべて打球の数を見逃さず数えてやがる」


観客C
「おいおいまじかよ俺にはあのラリーは見えねっつうのに」


スパーン     スパーン


観客D「35042.....35043....3504


観客F  「2万五千!!!!」


観客D「35044 ....35045..3504」

観客F「五百九万二千!!!
にまんろっぴゃく!!!」

観客A.B.C
「コイツ...!、邪魔してやがる!!!!」

スパーン   スパーン

観客D「35045く35046....きゅうまん....35047.35048..に....,せん?」


観客A「だめだ...DのやつFにペースを乱されてる、このままじゃもたないぞ」

Fの勢いのある妨害に
Dは我を忘れそうになりながらも数えて行く
この攻防はまさにもう一つのラリーが
繰り広げられていた

Dがんばれ!!!
A.B.Cは心の中でDがんばれとそう強く願った

一方

おじいさんはおばあさんさんと暮らした日々やスペシャルな人生を振り返りながら

心臓の鼓動にサーブを打ち

何度もアウトを重ねた

同じ過ちという名の
ダブルフォルトも何度も繰り返した

コートの仕組みや相手との戦い方が
わかってくると
どこか保守的になってしまう

安全牌のロブを打ったり

言い訳を見つけてドロップを打つような
技術を身につけてしまう

小手先のスピン技なんて
いらなかった

ロブを打っても相手にはスマッシュを打たれ
ドロップを打っても前線から狙われる

どこまで逃げても自己からは逃げれなかった
本当の安全牌などどこにもない

ネットに当たるのを恐れて
打たなかった時代や

ガットが破れてしまうことを怖がって
強く打てなかった時もある

本気のフォアハンドのストレート玉が
一番大切だということ

国士無双を打ち込むんだ

人生というのは長いラリーじゃ

長いタイブレイクの途中じゃ

なんてことを考えていたおじいさんは
気が紛れて

おばあさんに負けてしまいましたとさ

めでたしめでたし

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