魔法が解けた話
バイト先では色んな貸し出しをしてる
アイロンも貸し出してる
アイロンなんか使う人いるのかね
と思っていたら
おばあちゃんくらいのお客さん
がアイロン貸してくださいと言ってきたので
待ってました!と
アイロンを渡した
するとしばらくしてお客さんが戻ってきて
これ顔にやるアイロンでした
普通のアイロンはないのかしら?
どうやら顔にやるスチームみたいな
ものを渡してしまったのか
形状がすごく似てたから間違えて渡してしまった
アイロンあるかな
あった
はいこれどうぞ!
ありがとうございますと
おばあちゃんはアイロンをしにトイレに行った
しばらくして戻ってきた時に
顔のシワは取れなかったけど 服のシワは取れたわ。ありがとう。
と言われて
なんて返せばいいかわからなくて
ふぇふぇ みたいな声を出して
ありがとうございますと言った
あの後一日中ずっと後悔してて
なにが正解だったんだろうと考えた
なんて返せばよかったのだろう
ちくしょうなんて返せばよかったんだああああああああ
- そんなことないですよ!
返しとしてはこれが一番有力候補ではあったのだけど
実際ついてしまったシワはもう取りづらい
スチームでシワが取れたら全員やってるし
俺もやりたい
なのにまるで嘘をつくみたいにそんなことないですよ!と言うのは
何も励ましにもならないし
逆に気を遣ってるのが
パリパリサラダくらいバリバリに伝わる答えになるのは逆効果だ
汚い庭を見て
うわーとても綺麗なお庭ですね
住みたい〜みたいな
皮肉にとらえられたときには
もうキツイ
褒めることだけが正しいわけではないのが
難しい
顔のシワは取れなかったけど 服のシワは取れたわ。ありがとう。
- そうですねぇ はははははははは笑
これはダメ笑
もしかしたらおばあちゃん側が自分から投げたボールではあるけど
逆ギレしてくる可能性も高い
自ら自虐的なネタでふってきてるから
多少の防御力とHPはあると考えられるが
多分ほんとに求められてるものはそこじゃない気がする
あーわたしブサイクだよね
に対して
ほんとだ!今日なんか特にブサイクだね
どうもブサイク!!
と言って欲しいのではなく
そんなことないよ可愛いよと肯定して欲しい
心理と同じように
もしかしたらおばあちゃんも
肯定されたかったのだろうか
おばあちゃんも綺麗なおばあちゃんだったんだけど
どちらのお返事をしても
裏目に出てしまうだろうという深読みが
判断を鈍らせてしまったのだと考えられる
顔のシワは取れなかったけど 服のシワは取れたわ。ありがとう。
逆に指差してめちゃくちゃ笑うとか
プロポーズするとかも考えたけど
もうふざけ始めてしまってる
色々考えて一番よかったのが
顔のシワは取れなかったけど 服のシワは取れたわ。ありがとう。
- 笑いじわが素敵ですよ
これだ
実際に物凄く笑いじわが素敵で丁寧な方だったのになぜあの時パッとでなかったんだろう
なに返せばいいかわからなくて
変な声を出してしまったことが恥ずかしい
またひとつ大人の階段をのぼった
君はまだシンデレラさ
12時になったということで
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