柴犬
お姉ちゃんからいきなり動画が届いた。
見てみると前に住んでた家の
前を通っている動画だった。
懐かしい。
前の家のまま少しも変わっていなかった。
小学四年生くらいまで
その家で過ごした。
大通りから小道に入り
少し急な坂を真っ直ぐ登ったところが僕の家
どこか遊びに行くときは
いつも大通りに出るとこからの
スタートだった。
大通りに出るところの角には
黒い柵の家があり
そこには番犬みたいに外に飼われている
柴犬が住んでいた。
その柴犬はとてもこわくて
角を人が通るたびに
ワ゛ンワ゛ン!!!と泣くのだった。
濁点が付くぐらい恐かった。
小学生からすると引くくらい恐かった。
ある日お姉ちゃんとショップ99に行って
お菓子を買ってから
公園で遊ぼうと家を出た。
問題はここからだった。
あの角を通らないとショップ99にも
公園にも行けない。
あの柴犬に吠えられたくなかったのだった。
なんかこの遊びのワクワクさえも
鳴き声でかき消されてしまいそうな
気がしたからだった。
どうか吠えられずに行けぬもんかと
僕は歩きながら悩んでいると
そんな僕を見てお姉ちゃんが
「知ってるよ!」とにやけて話す。
え?
「昨日、犬に吠えられずに通る方法が
テレビでやってたんだ!」
こんなことあるんですね!と思った。
聞いてみると簡単で
お尻を犬の方に向けて歩くらしい。
犬からすると顔を認識していないから
誰だろう誰だろう状態になって
黙ってしまうという。
ポケモンでいう混乱みたいな
ことなのかもしれない。
これだ!と二人で唾を飲み
僕とお姉ちゃんは
柴犬にお尻を向けて
カニみたいにソロソロとその角を通った。
すると誰でも吠える柴犬に
吠えられずに渡ることができた。
僕とお姉ちゃんは嬉しさのあまり
互いに目を合わせてハイタッチした。
めちゃめちゃ吠えられた。
2コメント
2019.06.21 16:42
2019.06.17 22:54